はじめに 〜 「鉄道模型シミュレーター」とは?
「鉄道模型シミュレーター」(Virtual Railroad Models, 以下 VRM と略記) とは、 パソコンの広大な仮想空間の中で、鉄道模型レイアウトを制作し、 そこで列車を自由自在に走行させることができるソフトウエアです。
なにしろ仮想空間ですから、収納スペースを気にすることなく、 最大 20m 四方にもおよぶ超特大のレイアウトを組立てることが可能で、 そこでは新幹線やブルートレインのフル編成が存分に走行できます。 これこそが VRM 最大の魅力ではないでしょうか。 コンパクトな鉄道模型として普及している N ゲージといえど、 これだけのものは、なかなか製作できないはずです。
- 「レイアウター画面」
- 「ビューワー画面」 運転席視点
- 「ビューワー」 上空カメラモード
- 「ビューワー」 後方カメラモード
VRM は、CAD ライクな画面でレイアウトを組み立てる「レイアウター」と、 レイアウターで組み立てたデータにもとづいて、仮想空間に列車・レール・建物等 を描画(レンダリング)する「ビューワー」の、ふたつのソフトウエアから構成されます。
CAD とはいっても、そんなに難解なものではありません。 レイアウトのベース(土台)が表示されている、グリッド状の画面内に、 ドラッグ・アンド・ドロップで、レールや駅ホームや建物などの部品を並べてゆくだけで、 簡単にレイアウトを組み立てることができます。
ビューワーでは、多彩なカメラモードが用意されており、列車を追尾、 あるいは併走しながら、レイアウト上に展開される情景を楽しむことができます。 また、列車の運行とは独立して移動可能な、フライスルーモードで、 レイアウト内の散策も自由自在です。 このほか、単独の部品として用意されている、外部カメラを設置することで、 ハイライトシーンでのダイナミックな列車通過シーンが満喫できます。
この VRM は、N ゲージ鉄道模型を意識して仮想空間内の寸法を設定していますので、
このソフトウエアを、実際の N ゲージ鉄道模型において、
レイアウトプランを検討するための(字義どおりの)シミュレータとして利用することも、
もちろん可能です。
(バージョン3 第1号パッケージ "Powered by TOMIX" では、カーブポイント、
ダブルクロスなどの部品が新たに追加されており、
ターンテーブルを除くトミックス製品とほぼ同等のレールシステムが実現しています)
ただし、より厳密な話をすれば、VRM には、仮想空間であるがゆえに可能になることがある一方、 パソコンの限定された資源(リソース)や、その他の要因が制限となって、 実際の鉄道模型と同等の表現が実現できないケースもあります。
ex. レイアウト全体を一度に見渡すことができない(膨大なCPUパワーが必要) / 一定距離以遠の地面・ストラクチャー等が描画されない(同) / 機関車や編成同士の分割・併合ができない(今後のバージョンで対応予定) / etc., etc.
バージョン3登場
2001年夏、待望の「鉄道模型シミュレーター」バージョン3 がリリースされました。 (第0号「アイマジックセット」および第1号「Powered by TOMIX」の両パッケージ)
バージョン3 では、車両およびストラクチャー群のさらなる精密化、 地形編集機能の強化などによって、従来の VRM の印象を一新する、 新たなソフトウエアとして生まれかわりました。
- 精密車両たち
- Ver.3で再設計のストラクチャー群
- バージョン3で実現したトンネルの再現
その一方で、追加された機能や、データ形式の改良、仕様の変更にともない、 以前のバージョンとのデータの互換性が、一部放棄されていますので、注意が必要です。 (後述の「バージョン2 & 3の互換性」を参照)
また、背景画像や地面テクスチャーを自由にカスタマイズできるようになり、
近隣の風景の写真を加工してビューワーの背景に設定することや、地面テクスチャーの、
64種類使用可能なパターンの一部をカスタマイズすることで、海や川、
あるいは道路といった表現も可能になっています。
(マニュアル内の記述によれば、水面や道路については、今後のパッケージで、
それらのための専用のパーツが用意されることになっており、
これを以て正式対応とする意向のようです)
※「道路」は2号パッケージで、「水面」は3号パッケージで、それぞれパーツとして追加され、対応済。
ただし、これらのデータは、市販のパッケージ内には、標準的なものが1種類ずつ用意されているだけなので、 基本的に自分の制作するレイアウトの内容にあわせて、全部自分で用意することになります。 (一見かなり面倒なことのようですが、有志のVRMユーザの開設しているウェッブサイトの中には、 素材としてこれらのデータを提供しているものもありますので、それを利用することもできます)
なお、予告されていた、大半径のカーブレール等、 第0号・第1号パッケージで収録されなかったパーツ群については、 第2号以降の「号」つきのパッケージで順次追加・補完されるとの情報があります。
※ 0号・1号・2号・3号……とパッケージを買い足すことによって、 VRM バージョン3のシステムが次第に完成されてゆく、という開発コンセプトとのことです。 また、これらとは別途、新規にバージョン3クオリティで製作された車両が、 「追加キット」として順次リリースされる模様です。
製品ラインアップ 〜 用途に応じたパッケージのチョイスを
2001/11月現在の製品ラインアップとしては、以下のような構成になっています。
- 第0号パッケージ 「アイマジックセット」
- 第1号パッケージ 「パワードバイ・トミックス」
- 第2号パッケージ 「道路・国鉄車両特集号」(2001/12/05リリース予定)
- キット1 「新幹線700系7000番代」 (JR西日本「ひかりレールスター」)
- キット2 「885系特急型電車」 (JR九州「かもめ」)
- キット3 「新幹線500系」 (JR西日本「のぞみ」)
- キット4 「近鉄30000系」 (「ビスタカー3世」)
- 他、バージョン2時代のパッケージ群・車両セット等
「鉄道模型シミュレーター」として提供されている多様なパッケージ群を、 どのように選択あるいは組み合わせて使用するか? ここでは、用途に応じた製品のチョイス例の一部をピックアップしてみました。
(ここに挙げたチョイスがすべてということではありません。 これ以外にも、いくつかの揃えかたのパターンが考えられることでしょう)
Case 1: VRM V3ワールドへの入門(ミニマム構成)
- <チョイス1A>
- 第0号「アイマジックセット」 -- オリジナル規格のレール&ストラクチャー
- <チョイス1B>
- 第1号「Powered by TOMIX」 -- トミックス規格のレール&ストラクチャー
いずれのパッケージも、基本的なシステム(レイアウターおよびビューワー) が含まれていますので、どちらか一方のパッケージを購入すれば、VRM V3 による仮想空間の鉄道模型世界を楽しむことができます。
ただし、両パッケージは、同封のレールやストラクチャーの内容が異なる以外にも、 それぞれ含まれる車両が異なっていますのでご注意を。 (これらの車両は、単品での販売はされていません。 →Case 2 を参照)
この車両をぜひ走らせてみたいというような、好みの車種があるならば、 その車種が含まれているパッケージを選択するのがよいでしょう。
Case 1´: Nゲージ鉄道模型のシミュレーションとして
- <チョイス1´B>
- 第1号「Powered by TOMIX」
トミックス製品によるレイアウト制作をシミュレートするには、 第1号パッケージが最適です。レイアウト上で使用したトミックス製品の個数、 合計金額のリストを出力する機能も用意されています。 (機能自体は 0号も共通で利用可能ですが、金額は当然のことながら計上されません:-)
レイアウトプラン作成の支援ツールとしては、 VRM のレイアウター機能だけに内容を限定したパッケージが、より手ごろな価格で (株)トミーテック から発売されています。
Case 2: VRM3ワールドのフルコース
- <チョイス2A>
- 第0号「アイマジックセット」+ 第1号「Powered by TOMIX」
+ キット1,2,3,...(車両セット・続々登場予定)
第0号・第1号は、同封の車両が異なりますが、両方に含まれる車種をそろえたい場合は、 ぜひ両方のパッケージを購入しましょう。(これらの車両のみの、単独の販売はされていません)
また、双方のストラクチャーを併用することで、 レイアウト上で、より豊かな情景の表現が可能になることでしょう。
このほか、ウェッブ上で公開されている数々のレイアウトデータを、
ダウンロードして楽しんでみたいという場合、
そのレイアウトで使用しているパーツすべてが必要ですので、
両パッケージをそろえておく必要があります。
(中には、一方のパッケージだけでOKというレイアウトも、公開されていますが)
「キット」では、第0号・第1号に含まれる以外の、 さまざまな形式の車両が提供される予定です。 2001/8月時点では、新幹線700系7000番代「レールスター」や、JR九州885系「かもめ」 がリリースされています。
※ 追加キットは、アイマジック社ホームページでの通信販売と、 ベクターのオンライン販売(予定)で取り扱っています。一般店頭での販売はありませんのでご注意を。
- <チョイス2A´>
- 第0号「アイマジックセット」 + 第1号「Powered by TOMIX」
+ キット1,2,3,...
+ 第2号 (2001/12/05リリース予定・道路関連のパーツ等)
+ 第3号 (内容および発売時期は未定) ...
今後登場予定の「第○号」のパッケージを順次追加することによって、 VRM バージョン3 システムが完成されてゆきます。
Case 3: バージョン2で提供の膨大な車両群をゲットする
前記、チョイス1A〜2A´に対して、以下のパッケージ(どちらか一方のパターン)を追加します。
- <チョイス3A>
- + バージョン2 パッケージ(アイマジック版) + バージョン2 オプションディスク
- <チョイス3B>
- + バージョン2 パッケージ(トミックス版) + バージョン2 オプションディスク
VRM にはバージョン2 時代に制作された、バラエティあふれる車両群があるのですが、 これらの車両をバージョン3システムで運用するためには、 上記のいずれかのパターンでパッケージを追加する必要があります。
オプションディスク単体では、バージョン3システムへの組み込みができません。 これは、他のバージョン2用の車両セットについても同様です。
オプションディスクおよび バージョン2車両セットについては、 「キット」同様、一般店頭での販売はありません。 通信販売などをご利用ください。
(「アイマジック版」「トミックス版」各パッケージ単体でも、 相当の種類の車両が標準添付されていますが、通信販売で、 オプションディスクと合わせて購入するのが、おすすめ)
バージョン2 & 3の互換性
バージョン3 のデータについては、バージョン2のデータに対して、 基本的には「上位互換性」が保たれていることになっています。 これの意味するところは、要は「上位のバージョン」であるバージョン3の側から、 バージョン2 のデータを利用することは可能だが、 その逆はできない、ということです。
ただ、その上位互換性も、多岐にわたる機能追加や仕様変更などの、 やむを得ない事情により、完全なものとはなっていません。 以下、個々の事例について、その実際を記述しておきます。
車両本体のポリゴンデータ (メーカー提供) ○ -- ver.1の車両を除く ストラクチャー (メーカー提供) ×
バージョン3パッケージには、バージョン2規格で制作された車両データを、 バージョン3で使用可能なデータ形式に変換するための、 コンバート用プログラムが用意されています。
これは、バージョン2システムに組込み済みの車両データを自動的に検索して、 変換作業を行うもので、バージョン2規格で制作された車両については、 ひきつづきバージョン3システムで使用することが可能です。
バージョン1規格で制作された車両のうち、 車両セットおよびプレミアムトレインとして提供されていた車両については、 使用できません。
(バージョン2規格ながら、例外的に、リリース初期の不具合が原因で変換できないものがあります -- 103系マスカット色)
ストラクチャーについては、主要なものに関しては、バージョン3で再設計の上、 より精密なものが提供されているので、 バージョン2 のものを転用するというケースは、考えなくてよいでしょう。
ただし、細かいところで「人形」や「踏切(警報機)」など、人知れず(?) 消えていった小物もあります。それらについては、今後のパッケージで新規制作のものが用意されるのか、 動向が注目されるところです。^^;
(念のため記しておきますが、これらのバージョン2用ストラクチャーを、バージョン3用に転用することはできません)
※ 2002年7月現在、「人形」については2号パッケージ、 「踏切(警報機)」については3号パッケージで、それぞれ追加されています。
レイアウトデータ (ユーザ作成) △ 列車編成データ (ユーザ作成) ×
バージョン2システムを使用して作成された、レイアウトデータは、 バージョン3レイアウターで読み込み可能です。(内部で自動的に変換作業が行われます)
ただ、レール・高架橋・橋脚・ストラクチャー等々、全面的に仕様が改められた関係上、 この変換作業は、どうしても不完全なものとならざるを得ず、 この機能は、あくまで補助的なものと理解したほうが妥当かもしれません。
ゆえに、バージョン2で制作のレイアウトを、バージョン3で使用するにあたっては、 相当(かなり)の手作業による修正が必要、ということになります。
列車編成データについては、バージョン2のものをバージョン3で使用することはできません。 ご自分で作成されたデータについては、基本的には、 再度バージョン3上で編成を組みなおす必要があります。
※ 2001/12月現在
その後の修正で、バージョン2用編成データのロード(読込み)が可能になっています。
対象となるのは、2号パッケージ封入のシステムプログラム、および
Ver.3.0.1.0 アップデートデータ(公式ページで配布)適用後のシステムです。
動作環境について
VRM バージョン3を快適に動作させるための、推奨環境については、 アイマジック社公式ページ内「バージョン3製品情報」のページを参考にしてください。
VRM ユーザの使用機種の構成をみると、AMD Athlon 1.0GHz以上、 RAM 128MB以上、ビデオカードは GeForce2 系のチップ & VRAM 32MB以上を搭載したもの、といったあたりが、 およその標準とみてよいでしょう。(独断と偏見に基づく推定ですが^^;) CPU については、3Dの描画性能の観点からいえば、Pentium系 よりも Athlon系のほうが若干有利のようです。
一方、これらの条件を満たさない機種では、VRM バージョン3 が全く動作しないかといえば、 そういうことはありません。クロック周波数の低い CPU や、グラフィック性能の貧弱な、 大手メーカー製の低価格な機種(ex. コンパック製プレサリオ)でも、「それなりに」動作することを確認しています。 とくに、ビューワーに関しては、プログラムの高速化が徹底された結果、体感的には、 バージョン2のビューワーよりも軽快に動作している印象さえ受けます。
ただし、バージョン3 導入にあわせて、パソコンを新規に導入することを検討するのであれば、 これらの大手メーカー製の低価格機種は、候補から除外したほうがよいでしょう。 (VRMの用途に限定していえば、結果として高い買い物に終わることでしょう)
可能であれば、パソコンの自作という選択肢をおすすめします。 必要に応じてパーツのチョイスが可能で、不必要なパーツは組み込まないなどできますので、 予算に応じた、コストパフォーマンスに秀でたマシンを手に入れることができます。 もちろん、それなりの情報収集とスキルは要求されますが。
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